2022年度看護エデュケア研究会セミナーでは、松下看護専門学校副学校長・日本看護学校協議会会長である水方智子先生をお招きして「認識論でうまくいく看護教育における活用~相手のアタマの中に入らなければ看護も教育も始まらない~」というテーマで開催しました。休日にも関わらず、30名以上の看護基礎教育現場また臨床現場の方々にご参加いただきました。
認識論について研鑽を積み、その理論に基づいた教育に携わってこられた水方先生のご経験をもとに、ご講義をいただきました。最初に、小学校の授業事例(授業中に当てられて発言した1年生の女児が、教員の返答により最後には泣いてしまうという場面)を提示いただきました。なぜ女児が泣いてしまったのかなど、こういった現象は学習者の認識に教員が気づけていないことから生じていることに気づかされました。教育は、学習者の認識に目を向けることから始まり、学習者の認識から学習意欲を引き出すような関わりが必要になります。相手の認識をそのまま理解することはできないため、その表現としての言葉や態度、また、その表現に影響する状況も加味した理解が必要になることを学びました。
さらに認識には、具象、半抽象、抽象のレベルがあり、それは「感覚」「表象」「概念」に対応します。これら3つのレベルの上り下り、「具象」から「抽象」へは「つまり」の思考(帰納的思考)、「抽象」から「具象」へは「たとえば」の思考(演繹的思考)がセットとして学習されることではじめて「わかる」につながります。本セミナーでは、様々な具体例をご提示いただきながら、私たちも演繹的思考と帰納的思考を活用して認識論について学んでいることを感じました。
セミナー後半は、自身の事例を用いてグループワークを行いました。認識論の学習は、自分の事例を使ってこそ!ということです。各グループでは、実習指導や日々のスタッフ指導の中で、困ったなと思う場面を共有しながら、講義での学びを活かして学び合う時間をとなりました。例えば、教員と学生の認識のずれに気付かされ、教員自身として反省しつつ、相手の思いを聴くことの大切さを改めて共有できたと思います。相手の立場に立つというのは簡単なようですが、自分の体験を共有することで、本当の意味で、相手の認識に気づく大切さを私たちが実感する時間になったのではないかと思います。
最後に、水方先生より「ずれがあるから発展がある」というメッセージを頂きました。つまり、自分の思いと相手の思いにずれがあるから対話が始まり、相互理解が生まれるということです。そして、ずれがあると私たちが感じている学生こそが、私たちの教育力を強めてくれる存在であり、「教えることは自分が成長すること」という教育の原点に立ち返らなければならないことに気付かされました。
参加者の皆様にとっても、このセミナーの学びが明日からのご自身の実践のヒントになればよいなと思っております。また、皆様にお会いできることを楽しみにしております。
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令和4(2022)年度 第1回定例会を開催しました
日時:2022年10月2日(日)13:30~16:30(オンライン(ZOOM)開催)
本年度も昨年度に引き続き、オンライン開催となりました。「統合看護実習で何を学ばせるか」をテーマに、兵庫医科大学講師の三谷理恵先生に話題提供をして頂きました。
三谷先生は、統合実習教育に関しての研究をされており、今回は、統合実習の位置づけや指定規則の変遷などから遡り、看護学生の実践を得た学びからの結果と学生が複数受け持ちを経験する意義や、看護教員の認識と運営の実態について報告していただきました。
統合実習において複数患者を受け持つ体験からの学びを分析した研究成果として、看護師と共に複数患者にケアを提供するという看護実践の一部を担う経験によって、自分の看護実践を振り返り、患者中心の看護を改めて理解すること、さらに、これまでの臨床実習と対比しながら、学生の看護の統合の機会になっているのではないかという考えを示されました。しかしながら、統合実習を経験した卒業生によると、卒後教育が充実しつつある現場の中では、複数受け持ち体験が卒後の実践にどの程度活かされているかは疑問だという意見もあったそうです。たとえ実習で体験していなかったとしても、看護師として働く現場に対する受け止めは変わらない可能性があり、統合実習が学生から看護師への移行支援に繋がっているのかという疑問も提示されました。
また統合実習の教育方法は多様で、統合実習の具体的な方法や指導体制、教育課程別の比較といった実態調査の結果を提示いただきました。調査では、教育課程に関わらずチームの一員として他者と協働しながら看護職の役割を実践的に理解することや、自己の課題の明確化、看護観の醸成を目指した教育がなされていることが明らかになりました。さらに、教育課程別に比較すると、教育年限が3年課程では、看護チームの一員として実践する視点を学ぶことを、4年課程では連携・協働的な看護活動への理解が深まる視点を学ぶことにより重視されていることが示されました。
これまでの発表から、統合実習には多様な形態があり、またその学びも多様な中、学生にとって統合看護実習でどのような体験が必要なのか、何を学びとることが重要なのか、ディスカッションの視点が示され、参加者全員で話し合いました。
まず、今年度の統合実習についての話題になりました。コロナ禍による学生の実習体験の貧弱さが危惧される中、基礎実習や領域実習で培われているはずのコミュニケーション力や、社会化、グループダイナミクスなどが、4年生の統合実習でも育まれていないと思われる場面が多くみられるとの意見が出されました。また、新人研修が各施設で強化されるようになり、実務に即した新人教育も充実してきました。このような現状をふまえて、統合実習では、基礎教育で学んでほしいことの目的や課題を明確にし、各学校で学ぶ実習の中での統合実習の位置づけを考える必要があります。そして、統合するべき内容は何かが検討され、何を実習として実施していくか、必要とされる統合は何か、また、そのことを実践に繋げるために、どう統合していくか、どう看護を学ばせたいかなど、教材観、学生観を明確にし、実習という行為を通して何を実現したいかを検討する必要がある、など多くの意見がだされました。統合実習が指定規則上に新設された時代と現在では、統合実習の意味付けがかなり異なっている中、2022年度から始まった新カリキュラムでは、統合実習をどのように位置づけるかが検討され目標設定される必要があります。どのような実習を行うにも、各教員の教育観や教材観のばらつきが大きいと学生の目標達成が困難になることもあるため、実習目標や指導理念の共有が必要であることなど、課題が多くあることが理解できました。
今回の定例会では、何か答えを出すのではなく、話し合うことで、それぞれの課題や解決策の一助になり得たことが実感できました。今後、新カリキュラムの学生たちが、4年次を迎えるにあたって、それぞれの施設で、統合される実習、あるいは学内演習をデザインできるよう教員間の共有理解が必要となります。また実習方法も、VRやICTの活用、臨地で学ばせたいことと、学内で学ぶことを、学生が「学べた」と思うような仕組み作りや実習デザイン、企画の検討を充分に行う必要があります。
今回、話題提供いただきました三谷理恵先生、ありがとうございました。ご参加いただいた先生方からも貴重なご意見を頂き、充実した会になりました。今後ともよろしくお願い致します。
2022年度 セミナーのご案内
看護実践において、患者さんの気持ちが理解できない、患者さんや看護師の思い違いでトラブルになったという経験はないでしょうか。あるいは、看護教育実践において、学生に教員の意図が伝わっていなかった、えたのに理解されていなかった等の経験はないでしょうか。看護も教育も人を対象とする活動では、相手のアタマの中、つまり「認識」を知ろうと取り組むことから始まると言っても過言ではありません。
今回のセミナーでは、「認識論」を長年にわたり活用し看護教育を実践されてきた水方智子先生より、認識論の基本的な考え方、看護教育での活用方法についてご講演いただく事を企画いたしました。
皆様のご参加をお待ちしております。
チラシはこちらから→ 研究会用セミナーチラシ(HP)
テーマ
認識論でうまくいく-看護教育における活用-
~相手のアタマの中に入らなければ看護も教育も始まらない~
講師
水方 智子 先生 (パナソニック健康保険組合立松下看護専門学校 副学校長)
日時
2022年10月23日(日)13:30~16:30
方法
WEB開催(ZOOM)
会費
会員 無料 一般参加者:1000円
定員
30名(先着順)
本セミナーは、10月23日に終了いたしました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
令和4(2022)年度 第1回定例会のご案内
令和4(2022)年度 第1回定例会のご案内
第1回定例会を下記の通り開催いたします。
本テーマにご関心のある皆様のご参加をお待ちしております。
チラシはこちら → 2022第1回定例会チラシ (HP)
テーマ
看護学生から新人看護師への移行支援 統合看護実習で何を学ばせるか
話題提供者
三谷 理恵 先生(兵庫医科大学看護学部 講師)
開催情報
日時:令和4年10月2日(日)13:30~16:30(受付開始13:00~)
開催方法:オンライン開催(ZOOM)
※開催時間までに、研究会事務局より、Zoom招待メールを登録アドレスに送付します。
※Zoom開催のため、9月28日(水)までに、事前申し込みをお願いします。
対象者:本研究会会員 および 看護教員、看護職の方
参加費:無料
定員:20名程度
※本定例会は終了いたしました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
令和4年度 看護エデュケア研究会 年間計画
令和4(2022)年度看護エデュケア研究会の定例会、セミナーの日程をご案内いたします。
定例会、セミナーの詳細は確定次第、ホームページでお知らせいたします。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1回定例会
テーマ:看護学生から新人看護師への移行の支援:統合看護実習で何を学ばせるか
開催日時:2022年10月2日(日) 13:30~16:30
開催方法:ZOOM
話題提供者:三谷 理恵 先生(兵庫医科大学看護学部)
2022年度セミナー
テーマ:認識論でうまくいく―看護教育における活用ー
〜相手のアタマの中に飛び込まなければ看護も教育も始まらない~
開催日時:2022年10月23日(日)13:30~16:30
開催方法:ZOOM
講 師:水方 智子 先生
(パナソニック健康保険組合立 松下看護専門学校 副学校長)
第2回定例会
開催日時:2023年2月12日(日)13:30~16:30 (予定)
開催方法:ZOOM
令和3(2021)年度:会員総会を開催しました
令和3年度看護エデュケア研究会 会員総会を下記の通り開催いたしました。
看護エデュケア研究会総会
開催日時:令和4年2月27日(日)17:20~18:00
開催場所:ZOOM ミーティング
当日の会員総会の資料が必要な会員の方は、事務局までご連絡ください。
令和3(2021)年度 第1回定例会を開催しました
2021年度の定例会は、今回が第1回目です。話題提供者を含めた合計15名で、Zoomを使っての開催となりました。テーマは「あらためて基礎看護学を考える」です。
現在、世間はコロナ一色で、看護基礎教育も継続教育も大きな影響を受けています。また、地域包括ケアや地域創成事業の推進などの社会情勢の変化からの影響も受けています。2022年4月からは、看護基礎教育のカリキュラムが新しくなりますが、新カリキュラムにこの変化への対応を盛り込んでいる教育機関も多いことでしょう。看護教育はひとつの転換点を迎えていると言えます。基礎看護学は、かねてより看護基礎教育の中核をなすと捉えられてきましたが、これからの社会の期待に応える看護職養成において、どのように教授内容を捉え、実施していくべきか、さらには今後どのように変化していくべきか、このような問いをもって今回のテーマを設定しました。
話題提供をいただいたのは、千里金蘭大学看護学部、基礎看護学領域教授の登喜和江先生と、佛教大学保健医療技術学部看護学科、基礎看護学分野教授の山本直美先生です。先生方は、成人看護学を専門とされていたとのことですが、現在は基礎看護学を専門とされ、基礎看護学の教育的な意義や教育活動に面白さを感じているとのことでした。
登喜先生は、看護学概論で何を教えているのか、基礎看護学教員の経験の教材化について、基礎看護学は看護基礎教育の要になるかの3点についてお話いただきました。先生は、基礎看護学は入学したての学生を看護学に誘う科目であるとのお考えから、入学生が抱いていた看護へのイメージを良い意味で作り替えることで、看護を「面白い」「より深く知りたい」「看護を選んで良かった」と感じられることを大切にされているとのことでした。登喜先生のお話で一番印象に残ったのは、初学者に看護への興味関心を持たせる役割を担う基礎看護学の教員は、看護の魅力の発信者であること、看護実践者への敬意を払っていること、人間への関心、教育への関心を持てていることが重要だということでした。そして、基礎看護学は、看護基礎教育の最も重要な部分を支える教育を担うという点からも、医療や看護が高度化・専門分化することによる教育者の暴走、すなわち専門性の名の下に基礎教育を逸脱することがないよう、看護基礎教育の核を見失うことなく、あるべき姿に質すことが重要だとも言われました。激動の時代だからこそ、時代を見据えた看護基礎教育のあり方についての先生の深い洞察とこれからの基礎看護学教員へのメッセージが読み取れたお話でした。
山本先生も、初学者である学生にいかにして看護学への興味をもたせ自己主導的な学習ができるようにしていくのかを考えた授業をされていました。看護学概論ではポートフォリオの記入や闘病記やミルトン・メイヤロフの「ケアの本質」の読破など、学生を学問の世界に誘う工夫を様々にされていました。また、山本先生は、特に看護技術論の必要性についても述べられました。「コロナ禍でオンライン学習になることが多かったこの2年間、基礎看護技術演習を担当する教員の活動は授業中のデモンストレーションや学生への直接指導から、ビデオ教材作成に置き換わっているように思われる。しかし、本当にそれしかないのか、それで良いのか」という疑問も投げかけられました。また、現場のリアリティの追求としてのシミュレーション教育についても、リアルさをどんなに追求しても、本物ではないことを忘れてはいけないとも言われていました。
お二人の先生の話に共通していたのは、基礎看護学は、「学び方を学ぶ」科目であり、看護の楽しさを伝える科目であるということで、学生が楽しいと思える教育活動を行うことの大切さ、だったと思います。
お二人の先生の話題提供の後、参加者全員で意見交換しました。3年生の実習を担当している参加者からは、基礎看護学実習の時のようなピュアさが失われているような気がする、患者指導にばかり目が向いているような気がするなど、基礎看護学の学習で培った看護職者としてのアイデンティティや看護観が各分野の学習にうまくつながっていないのではとの疑問が出されました。登喜先生は、成人等の専門分野にはそれぞれの目的、目標があり、学生はそれに適応することもふくめて学習していること、それを経て看護師になっていくこと、基礎看護学の教育目標は、看護基礎教育の目標でもあり、それは4年間かけて目指されるものであること、さらに、もしも、各専門分野の教育の中で失われているものがあるとすれば、現代の看護基礎教育において、専門職になるために学生が捨てなければならないものなのかもしれない・・と示唆に富んだ回答をしてくださいました。
また、臨床の看護管理者からは、職場への不適応を起こしていた新人看護師への面談で、どんな看護がしたいのかを丁寧に聞いていったことで、離職を回避できた事例が報告され、「どんな看護がしたいのか」という「立ち返る場」をもっていることが、看護職としての強みになり、それを培うのが基礎看護学ではないかとの意見が出されました。
最後に、基礎看護学は、1・2年生のための授業を想定しがちですが、4年間通して看護基礎教育は行われるのであり、基礎看護学に限らず、どのような分野も4年間の、あるいはその後の看護師としての成長も視野にいれて教育を考えていく必要があることが確認されました。3年生、4年生、そして卒後継続教育においても基礎看護学分野の果たす役割がありそうです。今後もこの点を考えていきたいと思いました。
話題提供いただきました登喜先生、山本先生、ご参加くださった皆さまありがとうございました。
会員の皆様へ:令和3年(2021年)度 会員総会の開催について
令和3(2021)年度 会員総会を下記の通り開催いたします。
日時:令和4年2月27日(日)第1回定例会終了後より開催
開催方法:Zoom
議題:
1.2020年度 活動報告
2.2020年度 会計報告
3.2021年度予算
4.2021年度活動について
5.2022年度活動計画について
定例会に参加されず、会員総会のみに参加を予定される会員の方は、
事務局アドレス(kanri@ns-educare.jp)に、2月25日(金)までにご連絡ください。
令和3年(2021)年度 定例会のご案内
地域包括ケア推進、地域創生医療など地域志向の医療が推進される中、これからの看護職には地域での看護活動を主体的に担う役割が期待されています。
指定規則の改正を迎え看護基礎教育も転換期にある今、あらためて看護学および看護職の能力の中核を支える「基礎看護学」のあり方について考えていきたいと思います。
皆様のご参加をお待ちしています。
テーマ
あらためて基礎看護学を考える
話題提供者
登喜 和江 先生 (千里金蘭大学看護学部看護学科 基礎看護学 教授)
山本 直美 先生 (佛教大学保健医療技術学部看護学科 基礎看護学 教授)
開催情報
日時:令和4年2月27日(日) 13:30~16:30 (ZOOMへの入室開始時間:13:20)
開催方法:Zoomミーティング
※開催時間までに、研究会事務局より、Zoom招待メールを登録アドレスに送付します。
※今回は、Zoom開催のため、2月25日(金)正午までに、事前申し込みをお願いします。
対象者:本研究会会員 および 看護教員、看護職の方
参加費:無料
定員:30名程度
※本定例会は終了いたしました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。