2026年1月11日(日)に「看護に誘う教育―基礎看護学教育の意義」というテーマでセミナーを開催いたしました。当日は寒波で強風が吹く大荒れに天気でしたが、神戸女子大学ポートアイランドキャンパスには35名ほどの参加者がお集まりいただけました。
今回は基礎看護学教育がテーマでしたから、看護学概論と看護技術学の観点からお二人の先生にお話しいただきました。
まず、看護技術学教育の観点からは神戸市看護大学の内山孝子先生が「看護職アイデンティティを醸成する技術教育」と題して技術教育が看護職アイデンティティを育むための教育の実際を伝えていただきました。内山先生は、技術教育において技術の意味を考え、主体が自分(学生)ではなく患者であることを実感できることが大事と考え、技術試験は実施せず、授業内での『技術チェック』という形式を取り入れています。
技術試験で学生が感じる緊張感を緩和する方略を色々と検討されています。内山先生の教育の特徴は、教育ボランティアの活用です。その授業設計において、患者が主体となる看護技術を学生自身が考えることで、「気持ちの良いケア」(触れる・温める・包む・待つ)の実践につながり、その患者の反応から学生が刺激を受けるといった教育効果も紹介していただきました。最後に、看護職のアイデンティティは「技術そのものではなく、技術教育のかかわり方によって育つ」つまり、教員の看護職アイデンティティ(看護観や教育観)が技術教育に影響するということで、看護教員アイデンティティを問い直し、育み続けることが大切であること、その重要性が共有されました。
次に、天理大学の茂野香おる先生には、「ゆるぎない看護を伝える」と題して、基礎看護学の要となる「看護学概論」の教育的意義についてお話しいただきました。茂野先生は、看護学概論は、看護学を学ぶ学生にとって「初めの第一歩」であり、方向性を見失わないように導く必要があると話されました。学生の多くが「優しい看護師」といった看護師像を抱いている。しかしそれは十分条件ではないこと、同時に看護の力として看護ケアで患者の身体的変化を生み出すこと、看護独自の役割・機能とは何か、引いては看護とは何か?を考え続けるための基本的な考え方を伝えるのが看護学概論の意義だと話されました。理論も重要で、看護の基本となるナイチンゲールやヘンダーソンの理論の教授には多くの時間を割いて対象の理解や看護独自の機能を伝え、真心や誠意だけでは病を持つ人の看護はできないことを学生に伝えるのが看護学概論の教育的意味があると話されました。
参加者の皆様とのディスカッションでは、考えさせる臨床実習にするためには臨床の看護師の指導の姿勢として「思考発話」が重要といった意見。技術教育はチームで教育的価値を共有できなければ公平な教育にはならない。どの教材で何を伝えるのか、学生の経験を大事にしてディスカッションできるチーム力が大事だ、といった活発な意見が交わされました。
茂野先生、内山先生、ご参加の皆様ありがとうございました。
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令和7(2025)年 定例会を開催しました
2025年度の看護エデュケア研究会定例会を、神戸女子大学にて開催しました。今回のテーマは「看護基礎教育で看護観はどこで育まれるのか ― 基礎看護学実習がなくても看護観は育つのか ―」でした。この企画は、近年の看護師養成課程におけるカリキュラム改正や各大学の多様な教育方針により、基礎看護学実習の位置づけが変化している現状を踏まえたものです。各養成校の特色を生かした教育の中で、看護観がどのように育まれ、看護過程を展開する思考がどのように形成されているのかを改めて問い直すことを目的としました。
話題提供では、神戸市看護大学の石関美津子先生をお迎えし、「実習構造の変化を踏まえた『考えて動ける力』への関わり方 ― 各実習での“思考の基盤”をどう積み重ねていくか」というテーマで、急性期看護学実習を指導されている立場からご発表いただきました。続いて、神戸女子大学の菅野由美子先生に「看護基礎教育で看護観はどこまで育まれるのか」というテーマで、小児看護学実習を指導されている立場からご発表いただきました。両先生の話題提供は、実習の構造変化に対応した教育の在り方について深い示唆を与えるものであり、参加者にとって大変有意義な時間となりました。意見交換では、基礎看護教育のあり方や学生の学びをどのように保証するかについて、多面的な議論が交わされました。
まず、学生と患者が出会う機会の重要性が指摘されました。学生の学びは「どの患者に出会うか」に左右される側面があるため、偶然性に任せるのではなく、複数回の体験機会を確保することで学びを深められるという意見が出ました。基礎看護領域と専門領域との役割分担については、「どこまでを基礎が担うのか」という固定観念が依然として教員間に残っていることが指摘されました。特に、従来の教育観が影響し、「基礎で学生をある程度まで仕上げてから領域へ送るべきだ」という意識が今なお強いという声もありました。しかし現在は、教員全体で学生を育てる視点が求められており、「基礎」「専門領域」といった縦割りの価値観を超えた連携の必要性が共有されました。さらに、看護過程の思考力や批判的思考の育成が強く求められている一方、それが十分に身についていないという課題が指摘されました。カリキュラム上は科目間の連携を意識しているものの、実際にはアセスメント能力の向上が不十分で、「基礎での教育が不十分ではないか」という議論に戻りやすい状況があると考えられます。ここには、教員の教育力や新しい内容への対応力の差も影響しているとの意見が出されました。また、臨床現場でも新人育成の難しさが語られ、大学教育で学生が十分な力をつけられていないのではないかという懸念も示されました。基礎看護学実習の魅力として、学生と共に患者の大切なことを考えるプロセスが挙げられ、実習時間の短縮化の傾向の中で教員自身のアイデンティティの揺らぎについても率直な声も挙げられました。
最後に、定例会のまとめとして、社会の変化に合わせて教員の思考やカリキュラムを見直し、新任教員とベテラン教員が協働し、固定観念から脱却して学びを更新していく姿勢の重要性が共有されました。さらに、今後もこのような意見交換の場を継続していきたいと思っています。
令和7(2025)年度 セミナーのご案内
2025年度 セミナーを下記の通り開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。
チラシはこちら→セミナー チラシ
テーマ
看護に誘う教育ー基礎看護学教育の意義₋
講師
講演1 内山 孝子先生(神戸市看護大学基礎看護学 准教授)
講演2 茂野 香おる先生(天理大学看護学部基礎看護学 教授)
日時
2026年1月11日(日)13:30~16:00(13:00~受付開始)
会場
神戸女子大学 ポートアイランドキャンパス
会費
会員 1500円 一般参加者:3000円
※当日会場での支払いです
定員
80名
セミナーは終了いたしました。多くの皆さまに参加いただき、ありがとうございました。
令和7(2025)年度 定例会のご案内
令和7(2025)年度 定例会のご案内
定例会を下記の通り開催いたします。
本テーマにご関心のある皆様のご参加をお待ちしております。
チラシはこちら → 2025定例会チラシ 最終版
テーマ
看護基礎教育で看護観はどこで育まれるのか
-基礎看護学実習がなくても看護観は育つ?-
話題提供者
石関美津子先生 神戸市看護大学 助教
菅野由美子先生 神戸女子大学看護学部 講師
開催情報
日時:令和7年10月19日(日)13:30~16:30(受付開始13:00~)
会場:神戸女子大学ポートアイランドキャンパス
対象:看護教員・看護師・看護学生(看護教育にご関心のある方はどなたでも)
参加費:会員 無料 非会員500円(当日支払い)
定例会は終了いたしました。
話題提供者の皆さま、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
2024年度 看護エデュケア研究会 セミナーを開催しました
2025年2月9日(日) 甲南大学経営学部教授の尾形真実哉先生にご講義いただきました。会場の神戸女子大学ポートアイランドキャンパスには約60名の方がご参集くださいまいした。

オンボーディング(On-boarding)とは、元々は船や飛行機などに乗るという意味ですが、船や飛行機を組織にたとえ、新しく組織に参加してきた個人を同じ船(組織)の乗組員としてなじませ、適応できるようにサポートすることを指します。このサポートには非公式な活動も含めて、情報を与える行動、迎える行動、導く行動の3要素があります。一般企業への調査では、オンボーディングに力を入れている企業の方が、そうではない企業よりも中途採用者の定着率やパフォーマンスが良いということ、また、職場のコミュニケーションが活性化したり、業績が向上したりなどの成果もあり、オンボーディングは単に新規採用者のためだけではなく、組織自体を強くする効果があるとのことです。
ところで、新卒者の組織適応の課題として「リアリティショック」が上げられます。「リアリティショック」は看護の世界でも良く耳にしますが、その意味をしっかりと説明できるでしょうか?尾形先生は、これまでにリアリティショックの研究を多数されてきました。ですので、今回の講義においてもリアリティショックについて多数の知見をお話くださいました。新卒者の適応との関連では、新卒者が何にリアリティショックを感じるかということ、その中のどの要因が離職につながるのかを知ることが重要とのことです。看護職のような専門職型のリアリティショックでは、現実の厳しさをあらかじめ予想していても、それを超える厳しい現実が、リアリティショックを引き起こしています。リアリティショックの予防策には、プレオンボーディング、すなわち、入職する前の対応が効果的で、アメリカではRJP(Realistic Job Preview:現実的職務情報事前提供)が効果をあげているようです。RJPでは、良いことばかりではなくネガティブな面も含めて誠実に情報提供することが必要です。看護職の場合、基礎教育段階で臨床実習があるので学生は将来の就職先の状況を予め知っています。それなのに新人看護師となった時にリアリティショックが発生するのはなぜでしょうか?尾形先生からは、看護学実習において、学生に正確な現場の実態が知らされていないのでは?との問いかけがありました。看護職者のスムーズなオンボーディングを実現するためには、基礎教育段階の「実習」の検討も必要であることがわかりました。
さて、就職後の組織でのオンボーディングについて、尾形先生から5つの提言が行われました。それは、①配属の意義転換、②効果的な研修のデザイン、③適応エージェントの提供、④チーム育成、⑤環境整備です。
ここでは、新規採用者の配属先を検討する際に欠員の「補充」ではなく「教育」の観点に切り替えること、つまり、「育成上手」の上司がいる組織に配属することや、良いメンターを割り当てること、サポートチームを育成することなどがオンボーディングの促進につながることを学びました。特に、重要なのは環境整備。これは、職場内のコミュニケーションや相互学習、相互支援、育成の文化を醸成するなどを担う職場デザイナーとしての管理者の存在を意味します。中でも管理者の職責として重要なことは、今働いている社員を生き生き働かせることです。新卒者が憧れ、ロールモデルとなる先輩が多い組織が魅力的な組織といえそうです。
最後に、尾形先生から今後の人材育成の課題についてのお話がありました。
これまでの一斉研修を前提としたマス型や均等型ではなく、新卒者ひとりひとりに合ったオーダーメイド型の育成が必要で、そのためにも、管理職の人材育成力、職場デザイン力は一層求められそうです。
今回のセミナーでは、尾形先生はこれまでのたくさんのご研究の中から多くの知見をお話しくださいました。参加者からも、多くの質問が寄せられていました。尾形先生、ご参加の皆様ありがとうございました。
令和6(2024)年度 会員総会を開催しました
令和6年度看護エデュケア研究会 会員総会を下記の通り開催いたしました。
看護エデュケア研究会総会
開催日時:令和7年2月9日(日)17:00~17:30
開催場所:神戸女子大学ポートアイランドキャンパス
当日の会員総会の資料が必要な会員の方は、事務局までご連絡ください。
令和6(2024)年度 会員総会のご案内
令和6(2024)年度 会員総会を下記の通り開催いたします。
日時:令和7年2月9日(日)セミナー終了後
会場:神戸女子大学ポートアイランドキャンパス
議題:
【報告】
1.令和5年度活動報告
2.令和5年度研究会会計報告
3.令和5年度会員動向
4.その他
【審議】
1.次年度の活動
2.その他
セミナーに参加されず、会員総会のみに参加を予定される会員の方は、
事務局アドレス(kanri@ns-educare.jp)に、2月7日(金)までにご連絡ください。
令和6(2024)年度 セミナーのご案内
看護師のキャリア教育にどのように取り組めばいいのか?新人看護師に限らず、看護師を離職させないために何が重要なのか?今回のセミナーでは、経営学の観点から「組織になじませる力=オンボーディング」について、学んでいきたいと思います。
チラシはこちら→2024セミナーチラシ
テーマ
若年就業者の定着と成長を促すオンボーディング
講師
尾形 真実哉 先生 甲南大学経営学部経営学科 教授
日時
2025年2月9日(日)13:30~16:30(13:00~受付開始)
会場
神戸女子大学 ポートアイランドキャンパス
会費
会員 1500円 一般参加者:3000円
※当日会場での支払いです
定員
80名
※セミナーは終了いたしました。たくさんのご参加をいただき、ありがとうございました。
令和6年 第1回定例会を開催しました
2024年度看護エデュケア研究会第1回定例会が、神戸女子大学で開催されました。「看護学生の気づきを引き出すアプローチを考える」をテーマに、神戸市看護大学の澁谷先生から「発問」についての講義をしていただきました。
講義では、教育的な意図をもって学習者に関わっているか、「わかったつもり」と「わかった」の違いから、本物の「わかった」を生み出すには、どのような関りが必要であるかなど、事例を用いてわかりやすく講義をしていただきました。教員・指導者の解釈と学生の解釈のズレをどのように「発問」することで埋まるのかを「発問の三原則」(向山洋一、2021)「発問の種類」(池西静江、2017)を参考に提示されました。さらに、実習指導場面での「発問」では、学生に何を学んでほしいのかを指導者自身が明確にし、関わることで学生と指導者とのズレが埋まり、学生の「気づき」に繋がることをご教示いただきました。参加者自身も、今回の講義をとおして改めて自分自身の「発問」を振り返ることができました。
グループワークの様子
講義の後、参加者がご準備くださった実習指導場面でのプロセスレコードを基に、グループディスカッションを行いました。学生に何を学んでほしいのかを明確にし、教員・指導者の思いを伝える必要があります。ディスカッションでは、効果的な「発問」のタイミングを見計らいながら学生の「わかる」が本物になるようチャンスを逃さないようなかかわりが必要であることが話し合われました。また、教員・指導者の「発問」がうまく機能しない場合は、学生自身も実りのある目的に沿った実習になることが少なく、学んでほしかったことが学生に伝わらないまま臨地実習を終える可能性があります。このような場合、患者中心の看護援助とならず、看護学生中心の援助になる可能性があるのではないか、というような意見も出されました。また、何か問題が発生した場合は、指導者側は、すぐに振り返るのではなく、学生自身が1人で振り返る機会を持つことで、後日冷静に客観的な思考で話し合いができ学びに繋がる場合もあるという意見もありました。これらのことから、学生が「経験を意味付け成長できる」ためにはどの場面で「ゆさぶり」をかけるのか、学生が具体的な方法を見いだせるように効果的な「発問」を活用しながら、学生の「わかった」を生み出す必要があることがディスカッションをすることで共有されました。
今回のグループワークでは、指導者・教員自身が「発問」を十分に吟味し、学生の「わかる」に繋げていく重要性を改めて学び、考える機会となりました。最後に、参加者の皆様から、今回の学びを今後の学生指導に取り入れてみようと思う、という感想もいただきました。
講義をしていただきました、神戸市看護大学の澁谷先生、参加者の皆様、事例提供してくださいました参加者の皆様、貴重なお時間を頂き活発な話し合いができましたことに感謝申し上げます。


