令和2年(2020)度 第2回定例会を開催しました


 今回の定例会は前回に引き続き、Zoomを用い「授業に使う模擬事例の作成方法の検討―統合実習と看護過程授業の実例よりー」をテーマに開催しました。
 最初に、中岡亜希子先生(神戸女子大学)より、Zoomやクラウド型教育支援サービスを活用した統合実習を展開するために、市販の看護事例DVD教材を基に作成された模擬事例を報告いただきました。実習を学内で展開するという状況において、事例設定を考えるポイントは、学習目標の達成に向け、授業目標の分析を十分行うこと、学内で学びを補完するために、事例のリアリティを持たせるとともに、実習で学生が躓きやすい患者からの想定外の発言や状況を入れ込むことや、学習を促進させる仕掛けとして学生に提示する情報とあえて見せない情報の選別をしてくこと等、具体例を示しながらお話しいただきました。学内実習という形態であっても、知識・技術・態度という3つの観点を軸に学生に学ばせたい内容を構造化しているということでした。
 次に、澁谷幸先生(神戸市看護大学)より、看護過程の授業で活用した2事例について事例設定の意図を踏まえながら紹介いただきました。最初の事例は看護過程とは何か、看護実践に看護過程がなぜ必要かなど、この科目の導入を目的とした事例で、2020年度に話題になったTVドラマを基に作成されていました。ドラマの場面をどのような意図をもって抽出し、学習可能な事例へ作成したのかについて紹介いただきました。2つ目は学生が看護過程を展開するための事例で,過去に先生が指導された学生さんの実習を元に作成された事例です。看護過程の授業であれば、人がひとりひとりの人生を生きている統合的存在であることを理解できるように、事例患者には現在に至るまでの歴史(物語)を提示できることを大事にされているとのことでした。
 話題提供いただいたいずれの事例設定でも「学生に最も学んでほしいことは何か?」という問いが重要であることを共有しました。
 全体のディスカッションでは、事例のリアリティをいかに創出するのか、その際の工夫や情報の提示手段、事例作成時に難しいと感じている点などの意見交換がありました。いずれの事例作成時にも、事例から何を学んでほしいかをまず考えることや、事例を教材化していく力の重要性を共有できたように思います。COVID-19の影響の大きい一年でしたが、改めて「看護とは何か」「学生に何を学んでほしいのか」が問われた一年でした。お二人の先生方の話題提供から、どのような状況においても看護の本質と、学びの本質を問い直す大切さとともに、楽しみながら模擬事例作成に取り組んでみたいという前向きな気持ちが得られた定例会となりました。
 貴重な教育事例を具体的に提示いただいた2名の先生方、討議にご参加いただきました参加者の皆様、ありがとうございました。