2025年度の看護エデュケア研究会定例会を、神戸女子大学にて開催しました。今回のテーマは「看護基礎教育で看護観はどこで育まれるのか ― 基礎看護学実習がなくても看護観は育つのか ―」でした。この企画は、近年の看護師養成課程におけるカリキュラム改正や各大学の多様な教育方針により、基礎看護学実習の位置づけが変化している現状を踏まえたものです。各養成校の特色を生かした教育の中で、看護観がどのように育まれ、看護過程を展開する思考がどのように形成されているのかを改めて問い直すことを目的としました。
話題提供では、神戸市看護大学の石関美津子先生をお迎えし、「実習構造の変化を踏まえた『考えて動ける力』への関わり方 ― 各実習での“思考の基盤”をどう積み重ねていくか」というテーマで、急性期看護学実習を指導されている立場からご発表いただきました。続いて、神戸女子大学の菅野由美子先生に「看護基礎教育で看護観はどこまで育まれるのか」というテーマで、小児看護学実習を指導されている立場からご発表いただきました。両先生の話題提供は、実習の構造変化に対応した教育の在り方について深い示唆を与えるものであり、参加者にとって大変有意義な時間となりました。意見交換では、基礎看護教育のあり方や学生の学びをどのように保証するかについて、多面的な議論が交わされました。
まず、学生と患者が出会う機会の重要性が指摘されました。学生の学びは「どの患者に出会うか」に左右される側面があるため、偶然性に任せるのではなく、複数回の体験機会を確保することで学びを深められるという意見が出ました。基礎看護領域と専門領域との役割分担については、「どこまでを基礎が担うのか」という固定観念が依然として教員間に残っていることが指摘されました。特に、従来の教育観が影響し、「基礎で学生をある程度まで仕上げてから領域へ送るべきだ」という意識が今なお強いという声もありました。しかし現在は、教員全体で学生を育てる視点が求められており、「基礎」「専門領域」といった縦割りの価値観を超えた連携の必要性が共有されました。さらに、看護過程の思考力や批判的思考の育成が強く求められている一方、それが十分に身についていないという課題が指摘されました。カリキュラム上は科目間の連携を意識しているものの、実際にはアセスメント能力の向上が不十分で、「基礎での教育が不十分ではないか」という議論に戻りやすい状況があると考えられます。ここには、教員の教育力や新しい内容への対応力の差も影響しているとの意見が出されました。また、臨床現場でも新人育成の難しさが語られ、大学教育で学生が十分な力をつけられていないのではないかという懸念も示されました。基礎看護学実習の魅力として、学生と共に患者の大切なことを考えるプロセスが挙げられ、実習時間の短縮化の傾向の中で教員自身のアイデンティティの揺らぎについても率直な声も挙げられました。
最後に、定例会のまとめとして、社会の変化に合わせて教員の思考やカリキュラムを見直し、新任教員とベテラン教員が協働し、固定観念から脱却して学びを更新していく姿勢の重要性が共有されました。さらに、今後もこのような意見交換の場を継続していきたいと思っています。

