令和5(2023)年度 セミナーを開催しました


 今回のセミナーは、愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センターの内藤知佐子先生にご講義頂きました。参加者は、臨床から約20名、教育機関から約20名で、教育に携わる多くの方が関心を持っておられるテーマであることがわかりました。この参加者のニーズに合うように、講義は、学生・新人看護師との臨床での関わり方を含め、看護実践現場での発問や応答についてお話いただきました。

 まず、内藤先生の講義は、アイスブレイクから始まります。先生はこの関連書籍も出版されていますが、アイスブレイクは、授業の導入で、学習者が楽しく自己開示し、緊張をほぐす活動です。それは学びに誘う準備として、学習者にとって安心安全な場が第一に重要で、内藤先生は本セミナーの導入でアイスブレイクを使うことで、セミナー参加者に体験的に伝えてくださいました。また、講義では参加者は2人1組になって学習する「バディシステム」で、様々な学習を楽しく体験しました。
 講義は、Z世代の伸ばし方、心理的安全性、ファシリテーターになる、そして「発問」と「応答」のスキルの4つの内容でした。
 Z世代の特徴は、他の世代(ベビーブーム世代、X世代、Y世代)との比較から始まり、コロナ禍を経験したZ世代の伸ばし方を学びました。Z世代を伸ばすには、チームに貢献できている実感をもてるように一緒に頑張ろうという姿勢で関わることや意義や意味を伝えて価値を見出すことが大切だということでした。
 心理的安全性については、単に安心安全であるというだけではなく、責任の持たせ方と関連があることを学びました。心理的安全性が高くても、責任の度合いが低いと快適であっても「ヌルイ」と受け取られる場合があります。心理的安全性が高く、かつ適度の責任もある、そのことで、学習が進みます。
 次にファシリテーターになるという点です。ここでは、指導する側から見える世界と学習者が見ている世界の違いについて、内藤先生が提示された写真をもとに体験しました。学習者がどんな世界を見て、何を体験しているのかをファシリテーターがまず受け止めることで、その違いを知った学習者の内省が自然に発生するそうです。何よりも学習者の持っている力を信じることが大事です。また、何がわからないかがわからない学習者もいます。その場合の振り返り方についても具体例をもとに体験させていただきました。
  
 発問は、教育的な意図を持った問いかけです。適切な問いかけは、学習者の興味が喚起されたり、発想が広がったり、思考を深めたりします。内藤先生は、6つの発問と4つの応答があると言われます。授業の導入時には、導入の発問(〇〇について聞いたことはありますかなど)、展開では、発散と収束の発問(なぜそう考えたのか、聞かせてくださいなど)、深化させる発問(在宅看護は本当にハッピーなんだろうかなど、いったん良しとされたことをあえて問いかけるなど)、まとめではまとめの発問(今日はどんなことをしましたかなど)、その他、授業や研修での話し合いをマネジメントする運営のための発問(何をすればよいかわかりますか)も紹介いただきました。それぞれの発問について、参加者が場面を想像しながら考えることができました。
 応答については4つ紹介されました。それは、待つ、聴く、確かめる、返すです。もっとも重要なことは、応答することで心理的安全性をつくることだと学びました。学習者の答えに、まずは「すごい!」「さすが!」など肯定的なリアクションをすることが大切です。これも、バディと学習者と指導者になって体験させていただきました。発問と応答はセットであり、応答が意外に大事であることに気づくことができました。
 質疑応答では、話したくもない上司とどう付き合えばよいのかや、発問が正しい答えの誘導のようになっていること、できない部分が多い人をどのようにほめるとよいのかなどがあがりましたが、一つ一つ丁寧に回答していただきました。大切なことは、学習者の力を信じること、「なんでわかってくれないの」という怒りは、期待と実際のジレンマであり、こちらの弱さでもあるから、まずは「そうきたか!」「なんと斬新!」と受け入れること、それをちょっと楽しむことが大事だと教えていただきました。
 内藤先生のご講義は、先生の軽快な話し方がとても楽しく、また、具体的な体験をたくさん用意してくださり、あっという間の2時間でした。バディシステムで活動したことで短時間でも参加者間の交流が深まったように思えたことも成果のひとつでした。
 半日という短いセミナーでしたが、とても充実した学びになりました。参加者の皆さま、内藤先生、どうもありがとうございました。