令和5(2023)年 第2回定例会を開催しました


 今年度第 2 回定例会は、京都橘大学の野島敬祐先生を話題提供者としてお迎えし、京都橘大学シミュレーションコモンズにおいて、同大学のシミュレーション教育をご紹介いただくとともに、実際の設備を見学し、これからの看護教育におけるシミュレーション教育について意見交換を行いました。
 野島先生の話題提供では、京都橘大学のシミュレーションコモンズについてご紹介いただきました。ここは、臨場感を持たせるための映像音響システム、効果的なデブリーフィングを可能にする映像収録・配信システムを備えた総合的なシミュレーションルームです。特に、全壁面に病室や災害現場を投影できる壁面構成シミュレーターは映像や音響効果により、学生がその場の状況に没入して、学習課題に取り組むことが可能な設備でした。学生が臨場感を感じられる映像や音響が効果的に活用されることで、現場に行かなければ実現できなかった体験を、より安全な環境で学ぶことができ、なおかつ、それを繰り返し学ぶことができます。話題提供ではその授業実践例を多く提示いただき、シミュレーション教育の可能性を感じました。
 野島先生は、入学初期の段階から「シミュレーションという学び方を学ぶ」必要性を話されました。シミュレーション教育は、その手法を活用することで、学生がお互いに学びあい、主体性が引き出される学習方法だと言われています。野島先生は、この手法で学習した学生たちが自由に意見交換するようになってきたと話され、学生の可能性を信じる野島先生の教育姿勢を感じました。

 設備見学では、実際の使用場面を再現いただき、参加者の質問にもお答えいただきました。COVID-19 以降、多くの教育機関でシミュレーション設備が導入されていますが、効果的な活用には課題が多いようです。参加者同士でそれぞれがもつ課題意識を共有する時間となりました。シミュレーション教育はどのような設備を導入するかではなく、導入した設備を活用するための授業設計が重要です。野島先生から、基本は普段の授業や演習設計と同じであり、その中でも、必要な学習要素を精選する視点の重要さを教えていただきました。教育者としては、あれもこれも学んでほしいと学習要素を盛り込みがちです。その中で「そぎ落とす勇気」をもつことの大切さ、「学習者の身になって考える」大切さを改めて感じる機会となりました。シミュレーション機材の使い方ではなく、教育活動の基盤となる教材精選や授業設計の重要性を改めて学ぶ機会にもなりました。
 
 これまでの演習方法に、シミュレーション教育という手法を取り入れ、それを当たり前の教育にするためには、教育者同士の理解も不可欠です。京都橘大学では、学内 FDとともに野島先生が各領域の演習支援を行いながら、学内のシミュレーション教育普及に尽力されているようです。野島先生のシミュレーション教育にかける熱意を感じるとともに、どのような質問にもおおらかに、オープンにお応えくださる野島先生のお人柄に触れ、シミュレーション教育の楽しさを教えていだく時間になりました。
 野島敬祐先生、参加者の皆さまありがとうございました。