令和4(2022)年度 第1回定例会を開催しました


日時:2022年10月2日(日)13:30~16:30(オンライン(ZOOM)開催)
 本年度も昨年度に引き続き、オンライン開催となりました。「統合看護実習で何を学ばせるか」をテーマに、兵庫医科大学講師の三谷理恵先生に話題提供をして頂きました。
 三谷先生は、統合実習教育に関しての研究をされており、今回は、統合実習の位置づけや指定規則の変遷などから遡り、看護学生の実践を得た学びからの結果と学生が複数受け持ちを経験する意義や、看護教員の認識と運営の実態について報告していただきました。
統合実習において複数患者を受け持つ体験からの学びを分析した研究成果として、看護師と共に複数患者にケアを提供するという看護実践の一部を担う経験によって、自分の看護実践を振り返り、患者中心の看護を改めて理解すること、さらに、これまでの臨床実習と対比しながら、学生の看護の統合の機会になっているのではないかという考えを示されました。しかしながら、統合実習を経験した卒業生によると、卒後教育が充実しつつある現場の中では、複数受け持ち体験が卒後の実践にどの程度活かされているかは疑問だという意見もあったそうです。たとえ実習で体験していなかったとしても、看護師として働く現場に対する受け止めは変わらない可能性があり、統合実習が学生から看護師への移行支援に繋がっているのかという疑問も提示されました。
 また統合実習の教育方法は多様で、統合実習の具体的な方法や指導体制、教育課程別の比較といった実態調査の結果を提示いただきました。調査では、教育課程に関わらずチームの一員として他者と協働しながら看護職の役割を実践的に理解することや、自己の課題の明確化、看護観の醸成を目指した教育がなされていることが明らかになりました。さらに、教育課程別に比較すると、教育年限が3年課程では、看護チームの一員として実践する視点を学ぶことを、4年課程では連携・協働的な看護活動への理解が深まる視点を学ぶことにより重視されていることが示されました。
これまでの発表から、統合実習には多様な形態があり、またその学びも多様な中、学生にとって統合看護実習でどのような体験が必要なのか、何を学びとることが重要なのか、ディスカッションの視点が示され、参加者全員で話し合いました。
 まず、今年度の統合実習についての話題になりました。コロナ禍による学生の実習体験の貧弱さが危惧される中、基礎実習や領域実習で培われているはずのコミュニケーション力や、社会化、グループダイナミクスなどが、4年生の統合実習でも育まれていないと思われる場面が多くみられるとの意見が出されました。また、新人研修が各施設で強化されるようになり、実務に即した新人教育も充実してきました。このような現状をふまえて、統合実習では、基礎教育で学んでほしいことの目的や課題を明確にし、各学校で学ぶ実習の中での統合実習の位置づけを考える必要があります。そして、統合するべき内容は何かが検討され、何を実習として実施していくか、必要とされる統合は何か、また、そのことを実践に繋げるために、どう統合していくか、どう看護を学ばせたいかなど、教材観、学生観を明確にし、実習という行為を通して何を実現したいかを検討する必要がある、など多くの意見がだされました。統合実習が指定規則上に新設された時代と現在では、統合実習の意味付けがかなり異なっている中、2022年度から始まった新カリキュラムでは、統合実習をどのように位置づけるかが検討され目標設定される必要があります。どのような実習を行うにも、各教員の教育観や教材観のばらつきが大きいと学生の目標達成が困難になることもあるため、実習目標や指導理念の共有が必要であることなど、課題が多くあることが理解できました。
 今回の定例会では、何か答えを出すのではなく、話し合うことで、それぞれの課題や解決策の一助になり得たことが実感できました。今後、新カリキュラムの学生たちが、4年次を迎えるにあたって、それぞれの施設で、統合される実習、あるいは学内演習をデザインできるよう教員間の共有理解が必要となります。また実習方法も、VRやICTの活用、臨地で学ばせたいことと、学内で学ぶことを、学生が「学べた」と思うような仕組み作りや実習デザイン、企画の検討を充分に行う必要があります。
 今回、話題提供いただきました三谷理恵先生、ありがとうございました。ご参加いただいた先生方からも貴重なご意見を頂き、充実した会になりました。今後ともよろしくお願い致します。