第1回定例会を開催しました


 平成29年度第1回定例会は「看護師が成長する風土をつくる~看護師に向ける師長のまなざし~」をテーマに開催しました。話題提供者は前奈良県立医科大学附属病院副看護部長の橋口智子氏です。橋口さんは副部長時代に師長さん達が一生懸命に業務に取り組み、組織を維持し、指導に奮闘しているにも関わらず、どこか自信がない様子を見て、どう関わったらよいのかということを常々考えられていたそうです。そして、そのことを動機として、大学院に進学され、修士課程で取り組まれた研究の一部を発表してくださいました。
 これまでの看護師長、看護管理に関する研究から、管理者にとって重要なこととして、スタッフに暖かいまなざしを向け、言葉をかけるといった<目配り・気配り>に着目されました。具体的には、看護部長から推薦された目配り・気配りができる看護師長へのインタビューを通して、「部下の理解」「部下のモチベーションへの支援」「部下の人間関係の見極めと調整」「職場の雰囲気づくり」などが、目配り・気配りのできる師長の行動として示されました。
DSC_0020発表者の橋口智子氏(右奥)
これらのカテゴリーを聞いて、なるほどと思ったという方もおられましたが、師長経験のある方は、組織の改革に精一杯で部下と一体感を感じられなかったという経験も語られました。これまでに出会った師長さんについての参加者の意見では、期待されていることが伝わってくる師長さん、適材適所にスタッフを活用できる師長さん、ネガティブなフィードバックをしなければならない時でも本人に気づかせるように発問している師長さん、自分だけで問題を抱えずに皆で取り組もうと自然にスタッフを巻き込む師長さんなど、様々な師長さんの姿が挙げられました。これらは、個々のスタッフに関心をもっているからこそ、その個々人を見極めて行動している師長の姿です。そのような師長がいる現場は、スタッフが活き活きと働いていることにも気づかされました。逆に、師長の関心が自分に向いている場合には、スタッフは失敗なく最小限の仕事をこなそうとしているようだという意見もありました。
 橋口さんのもう一つのキーワードとして、部下を支援するための<承認行為>が挙げられています。師長さんの<目配り・気配り>と<承認行為>との関係は、とても興味深いと思いました。
 さらに、今回のテーマとなる看護師が成長する風土という点では、2つの文化が挙げられました。1つは、勉強会などはあまりなく、学習しようとするスタッフが浮いてしまうような組織で、「勉強したくない」看護師にはある意味居心地が良いというような学習意欲の低い文化です。もう1つは、学習する文化です。スタッフを含めて管理者が顧客志向でいる現場、つまり患者への良いケアのために学ぼうとする組織では、看護師が成長しているという意見もありました。
DSC_0021全体意見交換の様子
成長する風土を作る師長さんは、成長させようと意識しているよりも良いケアをすることを願う中で、結果としてスタッフが成長しているのではないかという意見もありました。様々な師長さんの姿を出していきながら、成長する風土をつくれる師長さんとそうでない師長さんの違いは、いつ、どこで生じていくのかという関心も生まれました。この点は、今後の研究に期待したいと思います。
 今回は、看護管理学の研究データに基づく興味深い議論となりました。本研究会では、これまでに継続教育、基礎教育など様々なテーマで定例会を行ってきましたが、今後も、皆様が臨床や教育の実践に持ち帰ることができる実り多いものになるような企画を進めてまいります。