令和4(2022)年度 第2回定例会を開催しました


 2022年度第2回定例会をオンラインで開催しました。今回は、シミュレーション教育に積極的に取り組んでおられる千里金蘭大学 伊藤朗子先生に「看護技術教育におけるシミュレーション学習の実際 -ファシリテーションと評価-」というテーマで話題提供いただきました。
 千里金蘭大学では、2013年からシミュレーション教育を取り入れておられます。シミュレーション教育の良いところとして、学生が安全な環境で失敗できる場であり、失敗から学ぶ中で関わっている学生全員でやり直しながら成長し達成感を得て学びをつかみ取れることであり、大切なことは、学生の「気づき」にあると話されました。
シミュレーション演習をどのようにデザインするのか、演習目標やファシリテーターの関わり方、患者状況の設定、ブリーフィング、デブリーフィングのポイントとしてお話しいただきました。入学後まだあまり臨床体験のない学生は、シミュレーション演習に取り組む当初、普段の自分(一般人)の発想、感覚で取り組み始めます。学生は、シミュレーション演習中の模擬患者とのやり取りで困ったり、悩んだりした体験を乗り越えていく中で、臨床の厳しさやリアルを感じるとともに、援助者として実践するということを実感し、専門職としての意識化につながっていくのだと話されました。「一般人から専門職者へ」、とてもインパクトのある表現でした。ファシリテーションにおいては、教員が喋りすぎないようにすることで意見を出しやすくすることや学生の反応の中から生まれてくる学びを大事にされていました。教員は、学生がとった行動が適切な思考を伴ったものであるのかを確認するなど、行動の背景にある学生の思考へのアプローチが必要だと話されました。実践されている具体的な内容を織り交ぜて話題提供していただき、看護職として成長していく上で、基礎看護学教育の重要性を再認識できました。
 話題提供後に、参加者間でシミュレーション教育の取り組み状況や課題などの意見交換を行いました。「学生が目標と全く違う行動をしたときには、どうしてそう考えたのかを確認する」「学生が間違いやすい内容を共有し、誰もが考えたかもしれない間違いであることを伝えながら答えを提示するように努めている」等、学生を安心させ、緊張感をほぐせる環境づくりに努めている点が特に多く聞かれました。また、ファシリテーションガイドは大切なツールですが、「準備しても何が起こるかわからない」「形を作りすぎると、学生の着眼点を見逃したり、意見の膨らみを止めてしまったりするのではないか」などの意見もありました。伊藤先生からは、学生に期待する動きと、教員が気にかけておくべき動きを決めておく必要があるというアドバイスをいただきました。また、「教員間で共有していても客観的に見れば学んでいる内容が異なる場合があり、教員個々の教育観の違いが要因ではないか」との意見も提示されました。教員間での考え方の統一の難しさを感じるとともに、教員のファシリテーションのレベルを整えることも重要ではないかという意見もありました。
 ICTやVRの発展によりシミュレーション教育は更に進化すると考えられます。看護学生が一般人から看護専門職者へと成長するための一教育方法としてシミュレーション教育がとても有益であると感じました。また、参加者のみなさんと情報交換できたことでブラッシュアップのヒントが得られた有意義な時間となりました。ご参加いただきました皆さまありがとうございました。