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令和2年度 第1回定例会のご案内

新型コロナウィルス感染症により、医療現場はもとより、社会全体が大きく変化しつつある今。看護教育現場も同様に、大きな揺らぎを体験した日々でした。令和2年度第1回定例会は、社会全体が大きく揺さぶられ、そして、ポストコロナといわれる時代を迎えつつある今。看護教育はこの状況にどう向き合うのか、基礎看護教育の現場と、臨床教育の現場から話題提供をいただき、看護教育としての新たな可能性を探っていきたいと思います。

テーマ

コロナ禍での看護教育の新たな可能性を探る

開催情報

日時:8月22日(土)14時~16時
開催方法:Zoomミーティング
※開催日までに、研究会事務局より、Zoom招待メールを登録アドレスに送付します。
※今回は、Zoom開催のため、8月18日(火)正午までに、事前申し込みをお願いします。
対象者:本研究会会員 
参加費:無料
定員:20名程度

募集を終了いたしました。ありがとうございました。

令和元(2019年)度看護エデュケア研究会セミナー「地域包括ケア時代のIPE」を開催しました

 今年度の看護エデュケア研究会セミナーは、「地域包括ケア時代のIPE~地域包括ケア時代に求められるIPEとは?~」をテーマに、第1部に講演会、第2部に実践報告とパネルディスカッションで開催しました。
田村由美先生
 第1部は、講師に日本赤十字看護大学田村由美先生をお迎えしました。田村先生のこれまでのご経験や、チーム医療、IPE/IPWとの出会いなどのお話を交えながら、多職種連携教育(以降、IPE)、多職種連携実践(以降、IPW)が求められている社会的背景、IPWに必要なコンピテンシーなどの基礎的知識についてご講演をいただきました。ご講演で、特に印象に残ったことは、IPEを考える時には、カリキュラムに入れるかどうかということでなく、「協働する学習機会を作る」ことが重要であること、IPEとIPWは分断されるものではなくセットであるということ、最後に、「IP(inter-professional)」とはどういうことか?を考えることの重要性です。「inter-」には「interaction」と「integration」の意味が含まれていています。IPWは、お互いがそれぞれの専門性を理解しあい、患者への良い実践のために、対等な立場で協力して共に働く中で成立する実践であることを学びました。
 続く第2部では、神戸学院大学と神戸市看護大学が共同で実践されているIPEの実際からその効果ととともに、実践していく上での課題や困難について報告していただきました。
内海美保先生澁谷幸先生
 内海美保先生には、神戸学院大学でのIPEの発展過程を報告いただきました。正課外の任意プログラムとして薬学部やリハビリテーション学部の有志教員の実践から始まり、現在では、4学部プラス神戸市看護大学1学部の5学部7職種の学生が参加する正課内選択科目となっています。多数の学部・専攻の教員からの協力が必要な科目の運営には、様々な課題や障壁が生じます。その課題や障壁をどう乗り越えてきたのかという内海先生の実践から学ぶことが多くありました。内海先生は、一番大切な事は「学生の未来」であると語られ、将来、IPWを実践できる人材を育てるという思いが教育活動に具現化されていてとても印象に残りました。
 澁谷幸先生には、看護学単科の大学においてIPEを実施する上での課題やIPEの実際について報告いただきました。IPEが卒後の継続教育の内容であると考えている教員が存在することやIPE担当教員のマンパワーなどの運営上の課題があることがわかりました。また、IPEに参加した学生が、他学部学生とのグループワークを通して「看護の専門性とは何か」を問い直し、考えを深めている様子についても紹介いただきました。
 第2部の最後は参加者と講演者との総合討議を行いました。参加者からは“IPEでの医師の視点の組み入れ方”、“1、2年次にIPEを行う意義”などの質問がありました。先生方の回答から、IPEを実践するうえでは、どの職種を組み入れるのかというよりも、「協働を学ぶ場」であるという価値を教員間で共有していくことが大切さであることや、基礎看護実習での取り組み例など、具体的な実践へとつながる示唆を得ることができました。
参加者からは、〈IPEを教育方略とするのではなくその意味をしっかり学習していきたい〉〈今日をきっかけにIPWの理解を進めたい〉〈IPE、IPWの方法はいろいろあることに気づかせていただいた〉等多くの感想をいただき、次の一歩につながる機会になったように思います。

 総合討議の様子

 ご講演いただきました、田村由美先生、内海美保先生、澁谷幸先生、そしてご参加いただき討議に参加いただきました皆様ありがとうございました。

令和元(2019)年第2回定例会を開催しました

看護エデュケア研究会 2019年度第2回定例会は、第1回のワン・アップ生活援助技術『洗髪の技術』に引き続き、『清拭の技術』についてのワークショップを開催しました。
前回に引き続き、神戸市看護大学柴田しおり先生、澁谷幸先生から神戸市看護大学における基礎看護技術演習について講義概要とデモンストレーションを提示していだきました。参加者は基礎看護学で学内演習を指導している教員や看護管理者などで、お互いの実践を通して学びあいました。
 最初に澁谷幸先生から、清潔ケア技術演習について、演習の前提となる教材観、学生観、清潔援助の原則と活用されているルーブリック評価について提示いただきました。その後、柴田しおり先生に、清拭のデモンストレーションを実施していただきました。患者の安楽さや体の動きへの配慮、タオルの扱いなどによっていかに気持ちの良い清拭にしていくのかについて、参加者は学生の時に戻ったようにメモを取りながら、柴田先生の動きを見逃さないよう熱心に見学していました。患者の背中など広い面を拭くときは看護師の手をしっかり活用する、患者の動きを感じながら体位を整えるなど、「感覚のコミュニケーション」という、キネステティク概念の実践への応用としての清拭であることを、澁谷先生の説明と柴田先生の実践から感じました。

その後、参加者同士でペアになり上半身の清拭を実践しました。タオルの持ち方、拭き方をはじめ、キネステティク概念をもとにした患者への触れ方、体位の整え方などを考えながら実践しました。柴田先生や澁谷先生がベッドを廻り、実践場面のアドバイスや、時に「なぜ、そのようにしていますか?」と発問があり、自分の実践を振り返ることもしばしばありました。それぞれの参加者が今までの清拭を学生の立場、患者の立場にかえって、体験を通して学ぶことができました。

演習後のディスカッションでは、演習を通しての感想や疑問などの意見交換を行いました。保温、タオルや綿毛布のかけ方、気流を感じさせないことの大切さ、キネステティクの技術を実践することで腕のあげ方一つでも違和感がないこと、患者の気持ちよさが変わること、背中を温めてもらった気持ちよさなど、演習を通して実感した内容を共有しました。
 また、学生を指導していくうえで気を付けている事や大切にしていることも話し合いました。「「ゆっくり拭くこと」と「丁寧に拭く」ことは違う。学生にはその違いを伝えることが大切であると思った」「学生の羞恥心を中心に考え、下着やキャミソールを着用して演習していたが、下着の上からでは清拭の心地よさや温かさを感じられず、気持ち良いケアについて考えられないかもしれない」「患者の気持ちに寄り沿い、患者の視点から考える大切さ」など教育方法を見直す意見も多く出されました。今回の実践中に、柴田先生から問われることで、参加者自身も気づくことが多く「教員自身がその大切さに気づけていなければ、学生には問えない」などの意見もありました。
臨床の看護管理者からは、「今日体験した清拭の「気持ちよさ」を看護師長にも体験させたい。ケアの質保証をする立場の看護師長だからこそ、体験してほしい」との意見もあり、私たち自身が経験した「気持ちよさ」をどう患者の看護に還元できるか、その視点に立ち戻り看護を考え、実践していく大切さを共有できたように思います。
今回、参加者同士でお互いの援助を通して、「気持ちよさ」を体感し、ディスカッションすることで、患者に「気持ちよい」技術が提供できる看護師を目指して、学生に何を伝えていくべきかを改めて考えることができました。今年度の定例会は、看護技術に焦点をあて、教育に携われる私たち自身もワン・アップしていけるための実践的な定例会を開催しました。自分の実践を見つめなおし、さらにワン・アップしていくためのワークショップを今後も考えていきたいと思います。

令和元年(2019年)度第2回定例会「ワンアップ生活援助技術-清拭技術-」ご案内

2019年度第2回定例会ワークショップ「ワンアップ生活援助技術ー清拭技術ー」を開催します。
第1回定例会での洗髪技術に続き、参加者間で実践を通して学びあうワークショップ形式です。
講師は、神戸市看護大学准教授 柴田しおり先生です。
ご関心のある皆様の参加をお待ちしております。
なお、本ワークショップ参加の際には、実践に必要な物品を持参いただきますようご協力をお願いいたします。
チラシはこちら→第2回定例会HP用

テーマ

ワークショップ 「ワン・アップ 生活援助技術ー清拭技術-」

講師

柴田 しおり氏 (神戸市看護大学准教授)

開催情報

日時:2020年1月11日(土)12:30~ 17:00 (12:00より受付開始)
場所:神戸市看護大学
参加費: 会員 500円   非会員 1500円
持参物品:パジャマ(前開き)1式、お好みのボディソープ、バスタオル1枚、フェイスタオル3枚、タオルハンカチ1枚
※持参物品についてご不明な点等お問い合わせは、備考欄または研究会「お問い合わせ」に記載をお願いします。
定員:20名(先着順)
※定員になりましたら、HP上で案内のうえ募集を終了いたします。予めご了承ください。

本定例会は終了いたしました。たくさんのご参加をいただきありがとうございました。

2019年度看護エデュケア研究会セミナー「地域包括ケア時代のIPE」のご案内

令和元年度セミナーを下記の通り開催いたします。
ご関心のある皆様の多くのご参加をお待ちしております。
ポスターはこちらから→2019 セミナーチラシ(HP)

テーマ

 地域包括ケア時代のIPE~地域包括ケア時代に求められるIPEとは~

開催情報

第1部:講演「地域包括ケア時代のIPE」 
   講師:田村由美先生(日本赤十字看護大学 教授)

第2部:パネルディスカッション「IPEの実際と課題」 
   内海美保先生(神戸学院大学薬学部准教授)澁谷幸先生(神戸市看護大学看護学部准教授)

日時:令和2年(2020年)2月1日(土) 13:30~16:30 (受付開始13:00~)
場所:佛教大学二条キャンパス 7階701講義室
参加費: 会員 1500 円   非会員 3000 円
定員:100名 (定員に達しましたらホームページ上にてお知らせの上、締切とさせていただきます)

※本セミナーは終了いたしました。多くのご参加をいただきありがとうございました※

令和元年(2019年)第1回定例会を開催しました

令和元年第1回定例会は、7月13日(土)に神戸市看護大学の基礎看護実習室で開催しました。今回は、ワン・アップ生活援助技術と題し、洗髪技術についてのワークショップを行いました。
まずは、神戸市看護大学准教授の柴田しおり先生に、洗髪のデモンストレーションを実施していただきました。柴田先生はJMA認定キネステティクの教師の資格をもつ数少ない看護職です。神戸市看護大学では、柴田先生を中心に、キネステティクの考え方を基盤として看護技術の教育をしているとの説明がありました。
参加者は、臨床看護師、管理者、大学教員で、洗髪のデモンストレーションを熱心に観察し、その後、気づいたこと、疑問に思ったことなどを自由に話しました。例えば、柴田先生のデモンストレーションについて「髪を洗っている時でも、患者の頭が揺さぶられていなかった」「患者の身体を移動させるといきに、いったん少し反対側に動かしているような感じがある」「シャンプー後にタオルでいったん泡を拭うとお湯をたくさん使わずに済むので、患者さんは楽だと思う」という感想があがりました。また、「臨床では、ケリーパッドを用いずに、おむつを敷いてシャワーボトルを使って洗っている」「シャワーボトルで洗うと、水の当たり方が不快なのではないか」という意見も出されました。

 柴田先生のデモンストレーションの様子

今回のワークショップは、普段臨床で実践している方も、大学で看護技術を教育している方も、自分たちの技術力を向上させる機会は少ないことを踏まえて企画しました。そこで、早速、参加者はペアを組んで、デモンストレーション見学後の気づきを実際に試し、練習することにしました。
各自の実践では、ケリーパットを久しぶりに使用したことや、普段使用していないピッチャーを使用したため、手間取っている場面も見受けられました。また、柴田先生の実践のように患者役の体位を整えようとしてもなかなか思うようにいかない場面があり、その都度、柴田先生にも助言を頂きながら、実施しました。
その後、洗髪実践後の爽やかな疲れを感じながら、柴田先生を囲み、振り返りのディスカッションを行いました。その中で、「今日はとても楽にできた」「臨床で洗髪を実施しようと思うと大人数で実施しているが、キネステティクのやり方を身につけると臨床でも応用できそうだと思った」などの意見が挙げられました。このことは、とても重要な視点だと思われました。患者にとってベッド上で洗髪をしてもらうことは身体的な負担や看護師への遠慮が生じる可能性がありますが、患者に、「大そうなことをしてもらった」と感じさせない技術や配慮が必要で、それを日常の看護実践の一部としていくのは、看護師の責任だと思います。
さらに、自分自身が患者として入院した経験のある参加者は、日曜日に看護師から「洗髪をしましょう」と提案され、その理由として「日曜だからお見舞いの人がたくさんくるでしょう」と言われた時の感動や、髪をベッド上で乾かすとき、患者さんが座ったときの姿を思い描いて髪の向きを考えながらドライヤーをあてているなど、洗髪という看護技術への思いも出されました。
 また、デモンストレーションをどのように学生に見せるのかという質問もあがりました。細かなポイントを説明しながらデモンストレーションを行うと、技術の流れがみえなくなるということがあります。神戸市看護大学では、現在は、前週に必要なポイントデモを実施し、翌週までに自己学習をしてくる方法をとっているとのことでした。
今回は、日常生活援助技術の一つである洗髪を取り上げたワークショップでした。ワン・アップにつながる実践とディスカッションによって、看護師にとっても、患者にとっても楽に実践できるスキルを身につけることの大切さに気づくことができました。次回もワン・アップ生活援助技術をテーマに、看護技術のスキルアップへつながる定例会を企画したいと考えています。

会員の皆様へ:令和元年度 会員総会を開催しました

令和元年度看護エデュケア研究会 会員総会を下記の通り開催いたしました。
看護エデュケア研究会総会
開催日時:令和元年7月13日(土)17:10~17:50
開催場所:神戸市看護大学

当日の会員総会の資料が必要な会員の方は、事務局までご連絡ください。

2019年第1回定例会開催のご案内

2019年度第1回定例会は、「ワン・アップ生活援助技術―洗髪技術-」をテーマとして開催します。
今回の定例会は、ワークショップ形式で、ワンアップした技術力とその教育方法について、参加者も一緒に体験を通して学びます。
講師は、神戸市看護大学准教授 柴田しおり先生です。
ご興味のある方,ぜひともふるってご参加いただきますようにお願いいたします。

ポスターはこちら→2019年度第1回定例会

テーマ

ワークショップ 「ワン・アップ 生活援助技術ー洗髪技術-」

講師

柴田 しおり氏 (神戸市看護大学准教授)

開催情報

日時:2019年7月13日(土)13:00~ 16:30 (12:30より受付開始)
場所:神戸市看護大学
参加費: 会員 500円   非会員 1500円
定員:20名(先着順)
※本定例会は終了しました。ご参加いただきました皆様ありがとうございました。

平成30年度第2回定例会を開催しました

今回の定例会は、看護実践における「動き」の支援について立ち止まって考えてみるという企画でした。講師は、神戸市看護大学の基礎看護学准教授の柴田しおり先生で、先生が基礎看護技術教育で重視されているキネステティクに基づく動きの支援について、ワークショップを行いました。

講師の柴田しおり先生

今回は、体験して実感することができる内容だったので、会場は和室になりました。参加者は、柴田先生の指示に沿って、ゴロゴロと寝転んだり、体を動かしたりしながら様々な体験をしました。その体験から、キネステティク感覚(動きの感覚)とは何か、キネステティクの6つの概念や、人の動きや動きの支援についてなどを学び、最後にこれを看護に活かすとはどういうことかについて考えました。
まず、「歩く」という動きを体験しながら、キネステティク感覚がどんなものかを確認しました。キネステティク感覚とは、一般的に良く知られている視覚や触覚といった五感の他に、人間に備わった動きの感覚のことです。私たちが動こうとするときに、あるいは動いているときに作動している、空間の認識・素早くあるいはゆっくりといった時間の調節・力といった動きの3要素が組み合わさった感覚です。視覚の感覚器が「目」であるように、動きの感覚は「筋肉」によって知覚されているのです。筋肉は運動器であるという認識が一般的だと思いますが、感覚器でもあるというのはひとつの発見でしたが、「うん、確かにある!」「ないと動けない」ことを実感しました。
つぎに、参加者がペアになって目を閉じて向かいあい、両手掌を合わせた状態で腕を動かすというワークを行いました。これは、『一緒に動く』という体験です。この体験で、私たちは、どちらが主導して動いているのかがわからないような感覚に気づきました。つまり、「一緒に動く」とき、私たちは「動きの感覚」を使って相手とインターラクションしています。このインターラクションが働いていると、相手に動かされているのか、相手を動かしているのかがわからなくなり、互いにふたりともが自分が動いているかのような、あるいは相手に主導されて動いているかのような感覚になるのです。
このような感覚は、看護師にも患者にも存在します。看護師と患者の「動きの感覚」が、相互同時的にタイミングよく作動されるとき、「一緒に動く」ということができます。つまり、「動きの感覚」=キネステティク感覚は、インターラクションのあり方を方向づけるものであり、コミュニケーションの要素のひとつと言えそうです。そして、この感覚が患者さんへの援助においてうまく使われると、患者さんは自分のもつ感覚や力を最大限に使いながら、かつ自分の動きたいように、まるで自分で動いたかのように動くことができる、つまり、対象のもつ力を最大限に活かした援助につながると言えます。
このことを知って、現在の看護実践現場で行われる移動や体位変換の技術を考えてみると、多くの看護師は患者さんが自分でできない部分を補助しているつもりで、実は患者さんを看護師の思うように動かしているのではないかと気づかされました。多くの看護技術のテキストに示される体位変換の技術は、人体の筋骨格系統の構造、関節の可動範囲という点で理にかなっているという意味で、人の自然な動きに沿った方法だとされてきました。しかし、これはあくまで「人体の構造」に合致しているというだけで、患者さんにも看護師にも「動きの感覚」があることが考慮されていませんでした。患者さんは「人の型をした物体」などではなく、意思をもった生身の人間です。自然な動きとは、関節可動域に沿うことではなく、生身の人間がもつ「動きの感覚」による動きなのです。看護師は、患者さんの「動きの感覚」を感じ取りながら、自分の「動きの感覚」を作動させて、インターラクション=感覚のコミュニケーションをしながら、動きを支援する必要があります。これが、看護において本来必要とされる「動きの支援」であることを学ぶことができました。 
この動きの支援は、単に体位変換や移乗などの援助に限りません。例えば、寝衣交換のときに、看護師は患者の腕の動きに合わせてパジャマの袖を通します。このときに、患者の「動きの感覚」を感じ取りながら、自らの「動きの感覚」を作動させて(インターラクションしながら)実施する場合と、患者の上腕や肩関節の可動域に沿って患者の腕をパジャマに通す場合とでは、どちらが人に対する援助=看護と言えるでしょうか? 前者は、「患者さんに腕を通してもらう」援助ですが、後者は「患者の腕をパジャマの袖に通す」行為だと言い換えられます。後者は、看護師主体の行為であり、仮に精巧に作られたモデル人形の腕であっても成立する行為です。つまり、「患者の腕をパジャマの袖に通す」という行為は、人の腕を物体化した、本来の看護とは少し違う行為のように思われます。このように考えると、キネステティク感覚はすべての援助技術に通底していることであり、キネステティクの概念は看護とそれ以外を分ける決め手になるとも言えそうです。キネステティクは、方法ではなく、考え方であり、患者―看護師関係や援助についての哲学につながる概念であることが理解できました。
キネステティク感覚について学ぶことは、人への援助とは 何かを学ぶこと、看護技術とは何かを学ぶことと同じだと言えます。参加者から、これを学生にどのように教えているのかという質問がありました。神戸市看護大学の基礎看護技術の授業では、キネステティクを講義や演習で学習した後、体位変換や移乗の技術を学習しますが、それ以降のすべての援助技術の演習において、学生達が常にキネステティク感覚を意識して援助できるように指導しているとのことでした。学生にこれを伝えるには、指導する教員が概念と技術をしっかり身に付ける必要がありそうです。
次年度の看護エデュケア研究会では、看護技術のワークショップを行っていく予定です。今回の体位変換のように、1つ1つの技術に通底する考え方やねらいについて改めて考えてみることで、臨床看護実践が向上する看護技術とその教育方法について考えていきたいと思います。