代表挨拶

 看護教育は、ここ10数年の間に、専門学校における教育から大学教育へと大きくシフトしてきました。「看護教育を大学教育で・・・」これは、私が看護基礎教育を受けた1980年代の看護教育のひとつのスローガンでもありました。それは、看護師を高い教養を身につけた専門職者として育てること、そして、そのことによって、質の高い看護を患者に提供すること、これが大きな願いであったからだと思います。看護系大学が200校を超えている現在、教育システムの基盤はできつつあります。しかし、ケアそのものの質向上という願いは実現できているのでしょうか?そもそも「大学で教育すれば、看護が良くなる」というような単純な発想ではないにしても、80年代の看護職者が大学教育に架けた思いとは裏腹に、現在の医療現場から聞こえてくるのは、医療事故の増加、看護実践能力の低下など、「本当に看護は良くなったの?」と思わされることばかりです。
 現在、社会の変化、医療ニーズの変化、そして、看護を志す若者の変化など、看護教育に影響を与え、看護教育がその内容や方法を変化させなければ対応できない様々な課題が山積しています。看護エデュケア研究会では、これらの課題について、看護教員や臨床看護師が、教育と臨床の壁を超えて、また、看護基礎教育、継続教育、卒後教育の枠を超えて越境的に協働的に検討していきたいと考えています。
 看護は人と人の関わりを基盤にして展開される活動です。どのような分野よりも、「ひと」との関わりを専門とする職業人として、自分自身の成長を求められる職業と言えるでしょう。大学であれ、専門学校であれ、そのような「ひと」を育てているという点でのミッションは同じです。研究会の名称である「エデュケア」という言葉は、「Education」と「Care」の単なる造語ではなく、「人々が生まれつき持っている価値、美徳を内側から引き出す教育」という意味があるそうです。私たちは、このエデュケアの意味に共感し、次の世代の看護専門職者が、各自のもつ力を最大限に発揮できるような教育的関わりをするために、また、各人の職場にある身近な問題を解決するために共に学びたいと考えています。
 研究会では、定期定例会やセミナーなどを開催しています。定例会では、看護教員、臨床指導者、看護管理者、時には新人看護師、学生なども参集して、互いの現場の新鮮な話題を提供し、意見交換しますので、学校と臨床の連携や協力のあり方についても考える機会になります。また、セミナーでは、看護教育実践に役立つ知識や技術を学ぶことができます。
 患者さんへの質の高いケアのために、そして、看護という道を選んだ「私」に誇りと喜びを感じながら働くために、是非一緒に学んでいきましょう。

看護エデュケア研究会代表 澁谷幸