平成28年度第1回定例会を開催しました


平成28年度第1回定例会は「看護学への入門としての基礎看護学(看護学概論・看護学原論)を考える」をテーマに7月23日に開催しました。話題提供者は当研究会会員であり、姫路赤十字看護専門学校副校長の柳めぐみ先生でした。
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柳先生からは、日本赤十字を母体とした専門学校における基礎看護学の取り組みをお伝え頂きました。設置母体の特徴として、赤十字の「人道」という理念に基づいた実践者を育成することを使命としていることが最初に伝えられました。基礎看護学は、そういった設置主体がもつ理念が教育内容に色濃く反映するという特徴があることがわかりました。また、姫路赤十字看護専門学校の基礎看護学では、1年次だけではなく、3年間を通して、看護に対する考え、人に対する見方を培い「看護とは何か」を問い続ける姿勢や自らの看護観を養えるように工夫されているとのことでした。具体的には、入学して間もない5月、6月の時期に、病院探索をはじめ、患者家族の立場で患者に寄り添う病院実習に加えて、看護師へのシャドウイング実習など、多くの体験をさせ、その体験を意味づけて看護とは何かを考えることや、さらに、3年次では「看護の実践哲学」において看護の本質を思考させていることなどが紹介されました。
柳先生の話題提供を受けて、参加者からは、実習病院との強い連携があることで、学生の豊富な体験が実現されていることを率直にうらやましく思う意見があがりました。また、自分の所属する教育機関の教育について、看護学概論が1年次だけのものになっていることや、他領域とは教育内容や活動が共有されていないことなどの意見が振り返りとして出されていました。また、老年・在宅看護学領域の教員である参加者からは、地域との共同参画で、学生に高齢者の見守り活動を体験させ、地域に必要な街づくりを提案し、それを実現させていることなども紹介されました。このように、様々な教育実践に対して、参加者間で活発に意見交換を行いました。また、昨今、地域包括ケアシステムが構築される中でも相変わらず多くの時間を占めている病院実習において、学生は、「病院の看護師は病気をみる人」だと認識し、生活者として「人」を捉えることが困難な実態についてもディスカッションされました。
今回の意見交換では、「体験」がキーワードとなりました。基礎看護学において、学生の「体験」を取り入れることは、学生が看護とは何かを考える機会として大切であり、そのためには、学生のレディネスに応じた体験を構成することが必要だと分かりました。そして、学生が本物を見る大事さ、また、看護師としてのロールモデルとなる人の実践を目にすることの大切さも確認しあいました。しかし、患者を思いやる心をどう育てるのか、入門の段階からステップアップしていく中で、どのように「体験」を取り入れていくのかという課題もあげられました。
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今回の定例会では、基礎看護学は、看護学生に、看護について常に考え続けてほしいという思いの元で教育されている教科であることが分かりました。どのような患者でも、また、どのような状況であっても、看護の本質や目指すところは同じであり、個々の患者、ケアの場で行われる創造的な看護活動の中で、看護師として自ら看護の意味を創造し、追求できる素地を造るのが基礎看護学の役割なのではないかと考えさせられました。
次回の定例会も研究会の会員メンバーからの話題提供を企画しています。皆様のご参加をお待ちしております。