令和元(2019年)度看護エデュケア研究会セミナー「地域包括ケア時代のIPE」を開催しました


 今年度の看護エデュケア研究会セミナーは、「地域包括ケア時代のIPE~地域包括ケア時代に求められるIPEとは?~」をテーマに、第1部に講演会、第2部に実践報告とパネルディスカッションで開催しました。
田村由美先生
 第1部は、講師に日本赤十字看護大学田村由美先生をお迎えしました。田村先生のこれまでのご経験や、チーム医療、IPE/IPWとの出会いなどのお話を交えながら、多職種連携教育(以降、IPE)、多職種連携実践(以降、IPW)が求められている社会的背景、IPWに必要なコンピテンシーなどの基礎的知識についてご講演をいただきました。ご講演で、特に印象に残ったことは、IPEを考える時には、カリキュラムに入れるかどうかということでなく、「協働する学習機会を作る」ことが重要であること、IPEとIPWは分断されるものではなくセットであるということ、最後に、「IP(inter-professional)」とはどういうことか?を考えることの重要性です。「inter-」には「interaction」と「integration」の意味が含まれていています。IPWは、お互いがそれぞれの専門性を理解しあい、患者への良い実践のために、対等な立場で協力して共に働く中で成立する実践であることを学びました。
 続く第2部では、神戸学院大学と神戸市看護大学が共同で実践されているIPEの実際からその効果ととともに、実践していく上での課題や困難について報告していただきました。
内海美保先生澁谷幸先生
 内海美保先生には、神戸学院大学でのIPEの発展過程を報告いただきました。正課外の任意プログラムとして薬学部やリハビリテーション学部の有志教員の実践から始まり、現在では、4学部プラス神戸市看護大学1学部の5学部7職種の学生が参加する正課内選択科目となっています。多数の学部・専攻の教員からの協力が必要な科目の運営には、様々な課題や障壁が生じます。その課題や障壁をどう乗り越えてきたのかという内海先生の実践から学ぶことが多くありました。内海先生は、一番大切な事は「学生の未来」であると語られ、将来、IPWを実践できる人材を育てるという思いが教育活動に具現化されていてとても印象に残りました。
 澁谷幸先生には、看護学単科の大学においてIPEを実施する上での課題やIPEの実際について報告いただきました。IPEが卒後の継続教育の内容であると考えている教員が存在することやIPE担当教員のマンパワーなどの運営上の課題があることがわかりました。また、IPEに参加した学生が、他学部学生とのグループワークを通して「看護の専門性とは何か」を問い直し、考えを深めている様子についても紹介いただきました。
 第2部の最後は参加者と講演者との総合討議を行いました。参加者からは“IPEでの医師の視点の組み入れ方”、“1、2年次にIPEを行う意義”などの質問がありました。先生方の回答から、IPEを実践するうえでは、どの職種を組み入れるのかというよりも、「協働を学ぶ場」であるという価値を教員間で共有していくことが大切さであることや、基礎看護実習での取り組み例など、具体的な実践へとつながる示唆を得ることができました。
参加者からは、〈IPEを教育方略とするのではなくその意味をしっかり学習していきたい〉〈今日をきっかけにIPWの理解を進めたい〉〈IPE、IPWの方法はいろいろあることに気づかせていただいた〉等多くの感想をいただき、次の一歩につながる機会になったように思います。

 総合討議の様子

 ご講演いただきました、田村由美先生、内海美保先生、澁谷幸先生、そしてご参加いただき討議に参加いただきました皆様ありがとうございました。