令和元(2019)年第2回定例会を開催しました


看護エデュケア研究会 2019年度第2回定例会は、第1回のワン・アップ生活援助技術『洗髪の技術』に引き続き、『清拭の技術』についてのワークショップを開催しました。
前回に引き続き、神戸市看護大学柴田しおり先生、澁谷幸先生から神戸市看護大学における基礎看護技術演習について講義概要とデモンストレーションを提示していだきました。参加者は基礎看護学で学内演習を指導している教員や看護管理者などで、お互いの実践を通して学びあいました。
 最初に澁谷幸先生から、清潔ケア技術演習について、演習の前提となる教材観、学生観、清潔援助の原則と活用されているルーブリック評価について提示いただきました。その後、柴田しおり先生に、清拭のデモンストレーションを実施していただきました。患者の安楽さや体の動きへの配慮、タオルの扱いなどによっていかに気持ちの良い清拭にしていくのかについて、参加者は学生の時に戻ったようにメモを取りながら、柴田先生の動きを見逃さないよう熱心に見学していました。患者の背中など広い面を拭くときは看護師の手をしっかり活用する、患者の動きを感じながら体位を整えるなど、「感覚のコミュニケーション」という、キネステティク概念の実践への応用としての清拭であることを、澁谷先生の説明と柴田先生の実践から感じました。

その後、参加者同士でペアになり上半身の清拭を実践しました。タオルの持ち方、拭き方をはじめ、キネステティク概念をもとにした患者への触れ方、体位の整え方などを考えながら実践しました。柴田先生や澁谷先生がベッドを廻り、実践場面のアドバイスや、時に「なぜ、そのようにしていますか?」と発問があり、自分の実践を振り返ることもしばしばありました。それぞれの参加者が今までの清拭を学生の立場、患者の立場にかえって、体験を通して学ぶことができました。

演習後のディスカッションでは、演習を通しての感想や疑問などの意見交換を行いました。保温、タオルや綿毛布のかけ方、気流を感じさせないことの大切さ、キネステティクの技術を実践することで腕のあげ方一つでも違和感がないこと、患者の気持ちよさが変わること、背中を温めてもらった気持ちよさなど、演習を通して実感した内容を共有しました。
 また、学生を指導していくうえで気を付けている事や大切にしていることも話し合いました。「「ゆっくり拭くこと」と「丁寧に拭く」ことは違う。学生にはその違いを伝えることが大切であると思った」「学生の羞恥心を中心に考え、下着やキャミソールを着用して演習していたが、下着の上からでは清拭の心地よさや温かさを感じられず、気持ち良いケアについて考えられないかもしれない」「患者の気持ちに寄り沿い、患者の視点から考える大切さ」など教育方法を見直す意見も多く出されました。今回の実践中に、柴田先生から問われることで、参加者自身も気づくことが多く「教員自身がその大切さに気づけていなければ、学生には問えない」などの意見もありました。
臨床の看護管理者からは、「今日体験した清拭の「気持ちよさ」を看護師長にも体験させたい。ケアの質保証をする立場の看護師長だからこそ、体験してほしい」との意見もあり、私たち自身が経験した「気持ちよさ」をどう患者の看護に還元できるか、その視点に立ち戻り看護を考え、実践していく大切さを共有できたように思います。
今回、参加者同士でお互いの援助を通して、「気持ちよさ」を体感し、ディスカッションすることで、患者に「気持ちよい」技術が提供できる看護師を目指して、学生に何を伝えていくべきかを改めて考えることができました。今年度の定例会は、看護技術に焦点をあて、教育に携われる私たち自身もワン・アップしていけるための実践的な定例会を開催しました。自分の実践を見つめなおし、さらにワン・アップしていくためのワークショップを今後も考えていきたいと思います。