令和元年(2019年)第1回定例会を開催しました


令和元年第1回定例会は、7月13日(土)に神戸市看護大学の基礎看護実習室で開催しました。今回は、ワン・アップ生活援助技術と題し、洗髪技術についてのワークショップを行いました。
まずは、神戸市看護大学准教授の柴田しおり先生に、洗髪のデモンストレーションを実施していただきました。柴田先生はJMA認定キネステティクの教師の資格をもつ数少ない看護職です。神戸市看護大学では、柴田先生を中心に、キネステティクの考え方を基盤として看護技術の教育をしているとの説明がありました。
参加者は、臨床看護師、管理者、大学教員で、洗髪のデモンストレーションを熱心に観察し、その後、気づいたこと、疑問に思ったことなどを自由に話しました。例えば、柴田先生のデモンストレーションについて「髪を洗っている時でも、患者の頭が揺さぶられていなかった」「患者の身体を移動させるといきに、いったん少し反対側に動かしているような感じがある」「シャンプー後にタオルでいったん泡を拭うとお湯をたくさん使わずに済むので、患者さんは楽だと思う」という感想があがりました。また、「臨床では、ケリーパッドを用いずに、おむつを敷いてシャワーボトルを使って洗っている」「シャワーボトルで洗うと、水の当たり方が不快なのではないか」という意見も出されました。

 柴田先生のデモンストレーションの様子

今回のワークショップは、普段臨床で実践している方も、大学で看護技術を教育している方も、自分たちの技術力を向上させる機会は少ないことを踏まえて企画しました。そこで、早速、参加者はペアを組んで、デモンストレーション見学後の気づきを実際に試し、練習することにしました。
各自の実践では、ケリーパットを久しぶりに使用したことや、普段使用していないピッチャーを使用したため、手間取っている場面も見受けられました。また、柴田先生の実践のように患者役の体位を整えようとしてもなかなか思うようにいかない場面があり、その都度、柴田先生にも助言を頂きながら、実施しました。
その後、洗髪実践後の爽やかな疲れを感じながら、柴田先生を囲み、振り返りのディスカッションを行いました。その中で、「今日はとても楽にできた」「臨床で洗髪を実施しようと思うと大人数で実施しているが、キネステティクのやり方を身につけると臨床でも応用できそうだと思った」などの意見が挙げられました。このことは、とても重要な視点だと思われました。患者にとってベッド上で洗髪をしてもらうことは身体的な負担や看護師への遠慮が生じる可能性がありますが、患者に、「大そうなことをしてもらった」と感じさせない技術や配慮が必要で、それを日常の看護実践の一部としていくのは、看護師の責任だと思います。
さらに、自分自身が患者として入院した経験のある参加者は、日曜日に看護師から「洗髪をしましょう」と提案され、その理由として「日曜だからお見舞いの人がたくさんくるでしょう」と言われた時の感動や、髪をベッド上で乾かすとき、患者さんが座ったときの姿を思い描いて髪の向きを考えながらドライヤーをあてているなど、洗髪という看護技術への思いも出されました。
 また、デモンストレーションをどのように学生に見せるのかという質問もあがりました。細かなポイントを説明しながらデモンストレーションを行うと、技術の流れがみえなくなるということがあります。神戸市看護大学では、現在は、前週に必要なポイントデモを実施し、翌週までに自己学習をしてくる方法をとっているとのことでした。
今回は、日常生活援助技術の一つである洗髪を取り上げたワークショップでした。ワン・アップにつながる実践とディスカッションによって、看護師にとっても、患者にとっても楽に実践できるスキルを身につけることの大切さに気づくことができました。次回もワン・アップ生活援助技術をテーマに、看護技術のスキルアップへつながる定例会を企画したいと考えています。